繰り返す二次むし歯を最小限の削合で再修復|右上3・4番ダイレクトボンディング症例(50代女性・CR再治療)

過去に前医で受けたコンポジットレジン(CR)修復が原因で二次う蝕が進行してしまった50代女性の症例です。右上3番(犬歯)と右上4番(第一小臼歯)の隣接面・縁下に及ぶう蝕を認めたため、ラバーダム防湿下のダイレクトボンディングで健全歯質を最大限に温存しながら、2歯同日75分で再修復を行いました。

治療概要

主訴 以前治療した右上の歯にむし歯が再発しているようで気になる
診断 右上3番(上顎右側犬歯)・右上4番(上顎右側第一小臼歯)CR周囲からの二次う蝕(隣接面〜縁下)
治療内容 ダイレクトボンディング(3級・4級相当窩洞/ラバーダム防湿下/ダイヤモンドウェッジ+テフロンテープによる縁下対応・隔壁形成)
治療期間・回数 1回・約75分(自費診療枠/2歯同日)
費用(税込) ¥100,000(2歯合計/1歯あたり¥50,000)
リスク・副作用 経年的に変色や摩耗が起こる可能性があります/強い衝撃で欠けることがあります(修理可能な場合があります)/術後に一過性の知覚過敏が生じることがあります/修復物の色調・形態には個人差があります/縁下に窩洞がある場合は歯肉の一時的な炎症・治癒遅延が起こることがあります/将来的に再治療が必要になる場合があります

「以前治療してもらった歯の周りがまた黒くなってきた気がする」とご相談でご来院された50代女性の症例です。

診査の結果、右上3番(犬歯)と右上4番(第一小臼歯)のいずれも、過去に他院で行われたコンポジットレジン修復物の周囲から、新たにむし歯(二次う蝕)が進行していることが判明しました。特に4番の近心側は歯と歯の間から歯ぐきの下(縁下)にまで及んでおり、通常の充填では対応が難しい位置関係でした。

「二次う蝕」とはどんな状態か?

二次う蝕(にじうしょく)は、以前治療した詰め物や被せ物の周囲に新しく発生するむし歯のことです。

治療から年数が経つと、詰め物と歯の境目にごくわずかな隙間が生じます。その隙間に細菌が入り込み、内部で静かにう蝕が進行していくことがあります。見た目では分かりにくいため、「痛くないから大丈夫」と思っているうちに深部まで広がってしまうケースも少なくありません。

今回の症例でも、患者さんご自身は「少し色が変わった気がする」という程度の気づきでしたが、拡大鏡とレントゲンで診査したところ、両歯とも修復物の下で想定より広く進行していました。

ダイレクトボンディングとは?

今回の再修復に選んだのが、ダイレクトボンディング(自費診療)です。

ダイレクトボンディングとは、歯科用の白いプラスチック(コンポジットレジン)を、お口の中で直接、歯に盛り付けて修復する治療法です。型取りをせず、その日のうちに天然歯に近い色・形を再現して治療を完了できます。

似たものに保険のコンポジットレジン修復があります。材料としては同じ種類のプラスチックですが、使用できる接着材・器材・治療時間・防湿の精度が異なるため、治療後の持ちや適合精度には差が出やすいのが実情です。

保険CRと自費ダイレクトボンディングの、当院における具体的な違いについてはこちらをご覧ください。

▶ 保険のコンポジットレジン修復と自費のダイレクトボンディングの当院における違いはこちら

治療の流れ

▼ 術前・術中・術後

右上3番・4番 CR周囲二次う蝕のダイレクトボンディング再修復症例(術前/う蝕・旧CR除去後/ラバーダム防湿+ダイヤモンドウェッジ・テフロンテープ適用下での充填/咬合調整・研磨後)の写真コラージュ|坂寄歯科医院
写真内訳:術前(旧CR周囲の二次う蝕)/う蝕・旧CR除去後/ラバーダム防湿+ダイヤモンドウェッジ・テフロンテープによる縁下対応下での充填/咬合調整・研磨後(右上3・4番/同日2歯)

1. 旧CRと二次う蝕の除去

まず、過去のコンポジットレジン修復物と、その周囲から進行していた二次う蝕を丁寧に除去しました。拡大鏡で健全歯質と感染歯質の境目を見極めながら、削る量を最小限に抑えるように努めています。

今回の4番近心側はう蝕が歯肉縁下まで及んでいたため、通常のセクショナルマトリックスだけでは隣接面の隔壁(かべ)を作ることが難しい状況でした。

2. 縁下対応:ダイヤモンドウェッジ+テフロンテープ

歯ぐきの下まで及んだ窩洞を正確に充填するためには、歯肉を一時的に圧排して乾燥した視野を確保する必要があります。今回はダイヤモンドウェッジで歯間と歯肉をしっかり圧排したうえで、マトリックスが歯面に馴染みにくい部位にはテフロンテープを補助的に用いて、隣接面にピッタリ適合する隔壁を形成しました。

この「縁下に届かせる隔壁設計」が、隣接面の二次う蝕を再修復する際の肝になります。隔壁が浮いたり隙間があったりすると、その部位からまた二次う蝕が始まってしまうためです。

3. 接着操作・充填

ラバーダム防湿下で接着操作を行い、歯質側に確実な接着層を形成した後、コンポジットレジンを層状に充填しました。臼歯部隣接面のコンタクト(歯と歯の接触関係)は強すぎても弱すぎてもトラブルの原因になるため、3番・4番の位置関係を同日で一気に整えました。

2歯同日治療の利点:3番と4番の隣接面コンタクトを一度に設計できるため、1歯ずつ日を分けて治療するよりも接触関係の再現精度が上がります。別日治療では片方を先に完成させた後で隣接面を合わせ込むため、どうしても調整幅に限界が出やすいのです。

4. 可能な限り歯を残す判断:頬側1点接触の温存

4番の頬側には、旧CRと健全なエナメル質が1点だけ接している部分が残っていました。通常であれば一度削って全面的に作り直す選択肢もありますが、この1点接触を保存できれば、その分だけ健全歯質を守れます。

今回はこの接触点を温存したまま、周囲のう蝕部分のみを置換する術式を選択しました。「どうすれば最も削る量を減らせるか」を常に考えながら、1歯ごとに設計を変えています。

5. 咬合調整・研磨

最後に噛み合わせの確認と最終研磨を行い、天然歯との境目が分かりにくい自然な仕上がりとしました。犬歯・小臼歯は笑った際にも比較的見える位置にあるため、色調の調和にも配慮しています。

なぜ「削り直し」が長く持つ修復につながるのか

「むし歯が再発したら、ただ穴を埋めれば良い」と思われがちですが、実は二次う蝕の再修復で一番大事なのは「隙間なく再接着できる環境を作ること」です。

古いCRを表面的に補修しただけでは、古い接着層と歯の間に残った細菌や変質した象牙質を封じ込めてしまい、再び同じ場所からむし歯が進行してしまいます。

今回のように「CRごと一度しっかり除去し、健全歯質に対して新しく接着し直す」ことが、再発リスクを抑えた再修復につながります。

隣接する2歯を「同じ日に」治療するという選択

隣り合った歯のダイレクトボンディングを同日で行う方が、別日で1歯ずつ治療するよりも有利になる場面があります。

一方で、一度に2歯を精密に仕上げるには十分な治療時間と集中が必要なため、自費診療の75分枠で丁寧に行うのが当院の方針です。

当院のダイレクトボンディング治療における「こだわり」と「強み」

当院がダイレクトボンディング治療において、特に大切にしていることをご紹介します。

1. 歯を最大限守ることを最優先します

治療の基本は、ご自身の健康な歯を可能な限り残すことです。当院では精密な治療を可能にする10倍の拡大鏡(ルーペ)を使用し、感染した部分のみを正確に、そして最小限に除去します。「健全歯質が1点でも残せるならそれを守る」という判断を、1歯ごとに行っています。

2. 「接着」技術への深い知見に基づいた治療

ダイレクトボンディングの予後(治療後の経過)は、いかに歯と詰め物を強力に「接着」させるかにかかっています。私(院長)は歯科医師向けにダイレクトボンディング治療の指導も行う講師を務めており、「接着」に関する深い知識と技術に基づき、接着力を最大化するための全ての工程を丁寧に積み重ねます。これにより、詰め物が外れたり、隙間から二次う蝕が再発したりするリスクを最小限に抑えます。

3. 縁下・複雑な窩洞に対する隔壁形成の工夫

今回のように歯ぐきの下まで及んだ窩洞、あるいは隣接面が複雑な窩洞に対しては、通常のセクショナルマトリックスだけでは対応しきれないケースがあります。当院ではダイヤモンドウェッジ・テフロンテープ・個別成形マトリックスなどを状況に応じて使い分け、「隔壁の浮き」「充填圧の不足」「隣接面段差」といった二次う蝕の温床になりやすいポイントを1つずつ潰していきます。

治療の詳細情報

ダイレクトボンディング法による歯の修復治療

【費用】 1歯あたり 50,000円(税込)

※本症例は【2歯同日】のため、合計【100,000円(税込)】です。

【治療期間】 1回(約75分/2歯同日)

治療におけるメリット

自然な見た目:周囲の歯の色や形に合わせ、治療跡がほとんど分かりません。

歯を削る量を最小限に:むし歯の部分だけを削るため、健康な歯質を最大限温存できます。

1日で治療完了:型取りが不要なため、通院1回で治療が終わり、お忙しい方にも適しています。

再感染リスクの低減:仮の蓋をする期間がないため、治療中に歯が細菌に汚染されるリスクを防げます。

金属アレルギーの心配なし:金属を一切使用しないため、アレルギーの心配は少ないと考えられます。

修理がしやすい:部分的に欠けたりすり減ったりした場合でも、その部分だけを修理することが可能です。

複数歯同日で精度の出しやすさ:隣接する複数歯を同日で治療することで、接触関係の再現精度を高められます。

リスク・副作用

経年により変色したり、磨耗したりすることがあります。

強度が天然歯より劣るため、硬いものを噛んだ際にまれに欠けたり割れたりすることがあります。

治療後に一時的な痛みや知覚過敏(歯がしみる症状)を生じることがあります。多くは時間と共に落ち着きます。

深いむし歯の場合、将来的に歯の神経の治療が必要になることがあります。

縁下に窩洞がある場合は、治療後しばらく歯ぐきに一過性の炎症や違和感が出ることがあります。

修復物の色調・形態には個人差があります。

お口の状態によっては、将来的に被せ物などの追加処置が必要になることがあります。

院長の治療方針:「歯の治療は回数券」

歯の治療は「回数券」のようなもの

歯科治療は、一度治療をした部位が永久に持つわけではありません。

時間の経過や日常生活の中で必ず劣化が進み、再治療が必要になる時がきます。

私はよく患者さんに「歯の治療は回数券のようなもの」とお話ししています。

仮に歯の寿命を「20枚綴りの回数券」に例えます。

この「消費枚数」が少ないほど、残りの歯質を長く使える可能性が高まります。

今回の症例で「1点接触の温存」にこだわった理由

4番の頬側に残っていた健全歯質との1点接触を温存したのも、この「回数券」の考え方に基づきます。そこを温存できれば、将来さらに再治療が必要になったときにも、削り残せる歯質がまだ残っている状態を作っておけます。

もちろん、「残すことがかえってリスクになる」ケース(クラックが入って強度が不足している等)では、迷わず除去する判断もします。1歯ごとに「残すか/削るか」を慎重に判断していくのが、ダイレクトボンディング治療の面白さでもあり難しさでもあります。

同じ患者さんの別の歯で、6年機能し続けている保険CRも

この患者さんのお口の中には、6年前に私が行った保険のコンポジットレジン修復(別部位の臼歯部)が、今も問題なく機能している歯もあります。同じ口腔内でも、部位・窩洞の複雑さ・リスクに応じて保険CRと自費ダイレクトボンディングを使い分けるのが、当院の現実的なアプローチです。

当院での治療の流れ

当院は保険医療機関ですので、非常に小さなむし歯の場合は、保険適用のコンポジットレジン修復で対応します。

しかし、より精度や持ちにこだわりたい場合・再治療の場合・縁下や隣接面など難しい位置のう蝕については、自費診療のダイレクトボンディングをご選択いただくことも可能です。

自費診療は保険診療に比べて予約時間を長く確保するため、1回の来院で治療できる本数が限られます。

そのため、ご希望の場合は初診時に「ダイレクトボンディング希望」とお伝えいただけるとスムーズです。

治療後のケアと万が一の際の対応

美しさを長持ちさせるために、治療後の艶やかで美しい状態は、定期検診での専門的な研磨(クリーニング)によって長期間維持できます。これにより、汚れが付きにくい状態を保ち、二次う蝕や歯周病の予防にも繋がります。

保証について

本治療には、特定の保証期間は設けておりません。

しかし、治療部位に何らかの問題が生じた際には、当院の責任において誠心誠意対応いたしますので、ご相談ください。

知覚過敏や歯肉の違和感が出た場合の対応:ごく稀に、治療後に歯がしみる・歯ぐきに違和感が続くことがあります。症状が続く場合は、歯の表面をレジンで一層コーティング(保護)する処置や、歯肉の状態に応じた対応を行いますので、我慢せずご相談ください。

このような方におすすめの治療法です

ご自身の歯の状態がダイレクトボンディングの対象となるか、また治療について詳しく知りたい方は、お気軽にご相談ください。実際に適応可能かどうかは噛み合わせ・歯肉の状態・う蝕の深さなどを含めて総合的に判断させていただきますので、初診時にご説明いたします。

※自費診療をご希望の場合は、十分な治療時間を確保するため、ご予約の際に「自費のダイレクトボンディング希望」とお伝えいただけますとスムーズですが、初診時に治療は行いませんので、その点はご注意ください。

よくあるご質問

Q. 二次う蝕(二次むし歯)とは何ですか?

以前に治療した詰め物や被せ物の周囲に、新たに発生するむし歯のことです。詰め物と歯のわずかな隙間から細菌が入り込み、時間の経過とともに内部でう蝕が進行します。見た目の変化が少ないため自覚しにくく、定期検診での早期発見が大切です。

Q. 古いコンポジットレジン(CR)でも、削ってやり直す必要がありますか?

CR自体が機能している場合は、無理に除去する必要はありません。しかし今回のように、CR周囲から二次う蝕が進行している場合は、健全歯質を守るためにCRごと除去して再修復する判断が望ましいケースがあります。レントゲンや拡大鏡での診査で、再治療の必要性を個別にご説明します。

Q. むし歯が歯ぐきの下(縁下)まで進んでいる場合もダイレクトボンディングで治療できますか?

縁下(歯肉縁下)まで進んだう蝕は通常の充填が難しくなりますが、ダイヤモンドウェッジやテフロンテープを用いて歯肉を一時的に圧排し、隣接面・縁下に適切に隔壁を設けることで充填可能な症例があります。ラバーダム防湿下での接着精度が予後を左右するため、症例選択と術式設計が重要です。

Q. 複数の歯を同じ日にダイレクトボンディングで治療することは可能ですか?

隣接する複数歯を同日で治療することは可能です。今回の症例では右上3番・4番を同日75分の自費枠で同時に修復しました。隣接面の接触関係を一度に再構築できるため、2歯別日で行うより隣接面の精度が出しやすいという利点があります。ただし、窩洞の位置や咬合状態により最適な術式は異なります。

Q. ダイレクトボンディングはどのくらい持ちますか?

持続期間にはお口の中の環境・咬合・ケア習慣による個人差があります。当院では、同じ患者さんの他の臼歯部に6年前に行った保険コンポジットレジン修復が今も機能しているケースもあり、適切な接着処理と定期的なメンテナンスを行えば長期間の維持が期待できます。保証期間は設けていませんが、問題が生じた際は当院の責任において誠心誠意対応いたします。

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当院では、すべての患者様に公平で質の高い医療を提供するため、ご予約やキャンセルに関して一定の方針を設けております。ご来院の前に、以下のご案内をご一読いただけますようお願い申し上げます。

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本症例は特定の患者さんの治療経過であり、すべての方に同様の結果を保証するものではありません。
治療効果・経過・費用は症例により異なります。詳しくは初診時にご説明いたします。

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