top of page
執筆者の写真三木雄斗

Q&A~今まで痛くなかった歯を治療したことで痛みが出てしまうのか~


こんにちは。

当院で虫歯治療を行い、次に来た時に症状を聞くと「痛みが出た」という方が一定数いらっしゃいます。

虫歯の治療や神経の治療など痛みがでる可能性がある処置を行ったときは、必ずその説明とそれを書いた紙をお渡ししているので、あまり不安にならずに済んだと言ってもらえることが多いので、紙を作成してお渡ししてよかったなぁと思っています。

歯チャンネルで回答していても、処置を行った後に痛みが生じたことを相談される方が多くいらっしゃいます。

ですので、今回はなぜ「今まで痛くなかった歯を治療したことで痛みが出てしまうのか」を詳しく書いていきたいと思います。

まず、

☆正常な歯の構造☆

から書いていきます。

一般的にあまり知られていませんが、歯とは大きく分けて3つの層で構成されています。 一番表層に存在しているのが人間の体の中で最も固いと言われる「①エナメル質」 その内側に存在しており、歯の大部分を占める「②象牙質」 その更に内側に存在しているのが血管組織と神経で構成されている「③歯髄」 です。

①のエナメル質の構成は  ・96%のリン酸化カルシウム(ハイドロキシアパタイト)  ・4%の有機質  ・水 で出来ています。 殆どが無機質によって構成されており、構造体の中に神経等は含めれていない為、この部分を削っても痛みはありません。 水晶状の構造になっており、表面に汚れが付きづらい為、虫歯がここを超えて象牙質に入るまでは大体5~6年以上掛かります。

②の象牙質はエナメル質とは打って変わり、無機質の含有量は約70%と非常に高くなっており、エナメル質よりも弾力性に富んでいます。このことは、歯に加わる衝撃で歯が割れてしまうことを防ぐという大きな意味があります。 また、象牙質は非常に小さな管(象牙細管)が大量に集まって作られており、その管の中には神経の一部が入り込んでいます。 そのため、健康な象牙質が露出した部分は冷たいもの・温かいもので染みたり、物が当たると痛みが出たりします。 なので、象牙質に達している虫歯を削るときには痛みが出てしまう事が殆どです。

(本当は画像があると分かりやすいんですが・・・私は集合体が嫌いなのでここは割愛させてもらいます(;'∀'))

③の歯髄は所謂「神経」と言われる部分になります。 実は、痛覚以外の圧覚・温度感覚は存在していないので、熱さ・冷たさは全て痛みとして認識されます。 また、歯髄には痛みを感じるという役割以外にも象牙質の形成・歯への栄養の供給・炎症などの刺激に対する防御反応など、様々な役割があります。 昔は「歯が痛い」というとすぐに神経を抜かれていたイメージがあったかと思いますが、現在では残せる状態の神経を抜くことで得られるメリットは皆無であるという事が分かっていますので、むやみやたらと神経を抜くことは否定されています。

構造自体は簡単に説明するとこんなところですね。

これ以上に詳しく知りたい方は歯科大生用の教科書を見てください(笑)

では次に、

☆虫歯とは何か☆

を書いていきたいと思います。

虫歯とは一言で言うと、「口腔内の細菌が産生する酸によって歯が溶かされる疾患」です。

細菌とはミュータンス菌とラクトバシラス菌の2種類がメインとなります。

またこの細菌は、グルカンという防御膜のようなものを作成し、その中に潜みます。

そのため、歯ブラシ・フロス・歯間ブラシのような要は物理的に落とす以外の方法で除去することは出来ません。モンダミンやリステリンのような洗口剤だけで汚れが一切落ちないのはそのためです。

ですので、虫歯とは細菌による感染症ではありますが、同時にブラッシングや食生活によって発症してくる生活習慣病の1つでもあるわけです。

ではなぜ、

☆虫歯になっている歯がなぜそもそも痛みが出ないのか?☆

それは虫歯によって象牙細管が塞がれて、歯髄への刺激を遮断するからなんです。

虫歯が神経ギリギリにまで近づいてきてようやく「冷たいもの」で染み始めて、ほとんど神経に接してくる・・・或いは入り込むと今度は「温かいもの」で染み始めてきます。

でもまだ寝れないほどの痛みは出ないんですよね。

虫歯が神経に入り込み、炎症を起こしたときになってようやくズキズキと痛みが出るようになってきます。

そしてこうなってくるともう歯の神経は不可逆的なダメージを受けているため、抜くしかなくなってしまうのです。

「要治療箇所の虫歯を歯科医師に指摘されるまで全く気付かない」というカラクリはここにあります。

では、本題の

☆今まで痛くなかった歯を治療したことで痛みが出てしまうのか☆

という所ですが・・・

歯を削る際には必ず摩擦熱が生じるのですが、その摩擦熱が歯髄にダメージを与えていきます。

元々の虫歯が神経に近ければ近いだけ、その摩擦熱も歯髄に伝わっていってしまいます。

麻酔をしないで歯を削った時に痛みがあるのはこれが原因です。

理論的なことを言えば、

虫歯は熱などの刺激を遮断するため、虫歯の所のみをピンポイントで削り取れば麻酔をしないでも痛みを感じることなく虫歯を取りきることが出来ます。

・・・が、現実問題、非常に小さい細菌の入り込んでいる所のみを治療器具で削り取るのは無理があります。

どれだけ小さい器具でも0.1mm前後ですが、細菌はそれよりも遥かに小さいですからね。

またどれだけ拡大視野を持って見えているとしても、人の手で削っている以上、必ず狙った所と実際に削ったところの位置に誤差が生まれてきます。

なので当院では虫歯の治療を行う際には必ず麻酔を行っています。

そのおかげで処置中に痛みが生じることはあまりありません。

しかし痛みを感じていないだけで実際には歯髄に摩擦熱によるダメージが確実に入ってしまっています。

麻酔が切れた後で、冷たいものや温かいもので染みるようになったり、物を噛んだ時に痛みが出てしまったり、何もしていない時にズキズキとするような痛みを感じるようになることがあるのは、これが原因です。

要は歯を削っている時点で、痛みが出る可能性が出てくるんです。

また、摩擦熱での神経へのダメージだけではなく、今までは虫歯によって遮断されていた熱などの刺激が、虫歯が無くなったことにより、金属或いはレジンやセラミックに接した熱を象牙細管を通って歯髄へ伝えてしまいます。これもまた術後の生じる痛みの原因となります。

ただ、この症状がひたすら続くわけではありません。

一番最初の歯の構造の時にも書きましたが、歯髄には「炎症などの刺激に対する防御反応」があります。これによって神経と刺激を受けている象牙細管との間に壁が作られてくることで、染みたり噛んだ時に痛かったりといった症状が改善してきます。

殆どの方で2~4週間以内・長い人で3ヶ月以内に改善してくると言われていますので、

処置後に痛みが出てしまった場合は、なるべくその歯で物を噛んだり、舌や指で押すような刺激を与えることを避けて、安静に過ごしてもらったほうが改善しやすくなります。

逆に痛みがあるときにその歯で噛んだりしていると、それがトドメになって神経に不可逆的なダメージを与えてしまう事があります。

ちなみに私は高校生の頃、治療した歯が1年ほど染み続けたことがあります・・・。

一般的には若い方が治癒も早いのですが・・・余程深かったんでしょうね(;'∀')

そんなギリギリの状態で神経を温存してもらえて助かりました。

うちに通ってくれている方には比較的良く言っていますが・・・

歯科治療の本質はダメになってしまった体の一部を取り除き、別の人工物に置き換える事です。

また、体の一部を取り除いているわけですから、治療行為そのものが体にダメージを与える行為になります。

今回は虫歯を取り除いた後の痛みについてのみ記載しましたが、その他の治療行為でも同じです。

多かれ少なかれ必ず体にダメージを与えることになりますので、処置後に痛みが出てくるという可能性は必ずあります。

だからこそ、医療分野には国家資格が必要ですし、治療に対する知識を学会や勉強会で常に更新し続ける必要があると思っています。

閲覧数:39,524回0件のコメント

最新記事

すべて表示
bottom of page